しかし、由布姫に心を寄せたのは晴信もまた同じだった。それを知った勘助は自らの思いを押さえ由布姫のもとに行き、晴信の側室となって男子を産み、諏訪の血を残すべきだと説得する。
自分を信頼してくれる信玄と、その信玄を仇敵と憎みながらも激しく愛する由布姫。この二人を支え続けることが、勘助にとって生きる上での原動力だった。
原作は、昭和28年から29年にかけて小説新潮に連載され好評を博した井上靖の同名小説で、歴史の大きな流れの中に生きた男の生涯を、飾りのない骨太な表現で描き出している。
戦国の世に生きる武将の気骨、戦略と奇略、正義と謀略、善悪を超越した生存のための戦い。そして、その妻や娘、取り巻く家臣たちの生き様。人々が、食うか食われるかの攻防を繰り返し、まさに命がけで生きていたこの時代は、どこか現代社会に通じるものがあるのではないだろうか。合戦は経済戦争と名を変えて、今も確かに存在している。
過酷な時代の中で、人が生きるために必要なものは何なのか? そして愛とは? 信頼とは? 時代を超えて人々に問い続けるこの問題に、答えはあるのだろうか。このドラマの中に、その答えの一端が潜んでいることは間違いない。


